今回は、内に向かって。。というか、内(現役院生)も意識して記してみました。
本研究科の院生は、一般的な修士論文の代わりに特定課題研究というテーマに挑みます。
自身の、MOTでの学びの集大成を顕現化させるわけですが、『自分が必要とするMOT』を表現する、最初の機会です。
具体的には、特定の研究テーマを設定し、それに対する解決策を、誰にでも理解でき、納得感のあるシナリオを以て、それをプレゼンする。
ということになります。
これが中々大変でして、本研究科、1年間での短期集中学修における最大のヤマ場です。
ヤマを越えるのは、やはりシンドイのです。
本稿では、その難しさの本質と、それに挑むにあたっての心構え的なものをとまとめてみました。
■eni社のロゴ
画像は、イタリアの半国営石油会社、eni社のロゴ設計図です。
モータースポーツ好きの方は方はご存知かもしれませんが、F1のスポンサーもこなす巨大企業です。
eni社のシンボルマークである、火を吐く6本足の犬のデザインが、すべて円弧の組合せとそれぞれの座標配置で表現されています。
この緻密さは驚嘆に値します。
昔は、こうした設計図がないと、正しいデザインを再現できなかったわけですね。
正しいデザインとは、元(原画)と同じ形、拡大・縮小したとしてもその形、デザインが崩れないこと。と、言えるでしょう。
まず初めに、ロゴが示す意味、コンセプトを発想します。
所説ありますが、私が好きなのは、クルマの4輪と人の2足が合わさって6本足、そして炎はあふれるエネルギーを表すという説。
つまり、eniのガソリンを入れれば、爆速で速く走れる!というような意味合いが込められているようです。
これが元々国営だった企業のシンボルマークだというのですから、『やるな、イタリア!』です。
次にデザインの原画を起こします。デザイナーが、コンセプトに則った、シンプルで力強いイメージを表現します。
そして、その次に課題になるのが、でき下がったデザインの再現性の確保です。
現代なら、原画をSCANしてベクターデータに落とし込んで、すこし手直しして、デジタル保存。
で、たぶん済んでしまいます。もしくは、最初からデザインソフトで制作でしょう。
デジタルなら再配布可能。同じデザインでの量産も可能です。
そこを、この設計図の様にデザイン画を、曲線は円弧の連なりという構成要素に分解し、さらに全体をロゴデザインとして再構成すべく統合していく。
気の遠くなるような作業です。
イタリアンプロダクトって、クルマやアパレル等を代表に、『美しい』、『官能的』等の感性価値が高いものとして語られることが多いと思います。
ただ、見過ごされがちなのが、この『緻密さ』ではないでしょうか。緻密さの積み重ねが在ってこそ、新たな『感性価値』が創造される。
そして、その緻密さに支えられているからこそ、他者を圧倒する。
イタリアンプロダクトの優位性、特異さの一つの側面です。
■NIT MOTの特定課題研究
まず初めに、当然ながら、MOTを学ぶ意義、目的は、人それぞれ違うということ。
ですので、研究テーマとして、なにを選ぶかは、自分自身で見出す必要があります。
そしてそれを、第三者にも判るように表現する。
このテーマを見出すのが、最初の壁。
次に、そのテーマ、課題に対し、どのような解決策を以てそれを征するのか、アウトラインを設計する。
この辺りまでは、主査の教授のサポートも頂きながら創りあげていきます。
最後に、自身のテーマ、或いは自社の課題に対する解決策を明確にし、だれもが納得できる再現性のある手法としてその内容を表現する。
この、『再現性のある手法』を表現する、プレゼン用スライド作成が、『緻密さの積重ね』の最たるものになります。
それは、必要なデータの収集や表現手法の工夫(インフォグラフィック等)であったり、説得力のあるプレゼン・シナリオのまとめであったりしますが、院生それぞれで緻密さの質は異なります。
なので、ある意味『孤独な作業』であり、誰にも頼れません(意見は交換できます)。特定課題研究発表直前の自習室は、『寡黙な職人』の集団になります。
だからこそ、院生同士は『お互いを認め合う』ことができるわけで、その『価値観を共有できる仲間との付き合い』は、『一生の宝』になることが多いのです。
頑張れ、15期生!