人が変わる仕組み


学び修める人、教え導く人、そして使う人

院生は学び、教授は教え導く。教育機関なのでここまでは当たり前、良くある話。

ですが、MOTの学びの特色にとって需要な要素たる修了生の現役院生への関わり、並びに修了生同士の交流。

この点は、NIT MOTの特色かもしれません。

 

『MOTを一人で組織に浸透させるとなると、3年はかかるかな。。』とは、とある修了生の言葉です。

多くの同じような立場の修了生は納得できると思います。

それだけ、周囲の人間とは差が生じ、MOTを学んでいない他者とは、日々のビジネス上のやり取りにも難渋することが多いようです。

 

そこで、自身が社長であったりそれに準じた経営者の立場の修了生は、部下を派遣する。

そうではない、例えば中間管理職よりの修了生は、同僚にMOT修学を勧め上司の説得に協力する。素直に、勧める相手の『タメになるから』と確証を持っている。だから多少の労苦は厭わない。そして、『MOT仲間』が身近にいた方が、組織をより良くできるという確信があるわけです。


ココから言えるのは、MOTを学び修めた後もその当人にとってのMOTでの学びをCoreにしたマネジメント・スキルは『深化(進化?)』していくものであり、それは身近に『MOT仲間』の存在があった方が、より良い方向に変わっていけるであろう自覚があるわけです。

脳には可塑性があり、鍛えれば望む姿に変われる

 小田研究科長が、興味深いNIT MOT Letter を書いてくれています。

経営者の論理的思考と直感的思考について
 ~直感的思考力を高めるために~

 

こちらには、『プロ棋士なるための勉強』という表現で、藤井聡太プロの『修行」について触れられています。

かなり乱暴にまとめると、藤井プロは幼少の頃よりプロ棋士の対戦や詰将棋の棋譜を大量に頭にインプットすることと、『自分ならどうするのか、どういった手を打つべきなのかを考える』ことを、何度も何度も繰り返したのだそうです。

その結果が、若くして大成した藤井少年のプロとしての在り方を導いたわけです。

 

そして、独立行政法人理化学研究所と富士通株式会社・株式会社富士通研究所が社団法人日本将棋連盟の協力のもと、そのメカニズムが、脳科学分野の知見を用いた信憑性の高い仮説が導きだれたようです。(以下、①~④は小田先生の記述を引用)

①棋士は、長年にわたり将棋に特化した思考の修練を重ねており、指し手の予測、選択、長考とそのなかでの一瞬の閃きなどに見られる独特の思考の過程には、脳の思考の仕組みを説く重要な鍵が隠されていること。

②プロ棋士の脳の瞬時の活動として、盤面の駒組を読む時および一手を選択する時の脳の活動を測定することで、アマチュアとは異なる脳の思考回路の存在が示されたこと。

③プロ棋士の一手の選択には大脳基底核の一部である尾状核頭部の活動が現れたこと。

④行動選択を担うとされる同部位の活動は習慣的行動の言葉に出来ない記憶を蓄えることで知られ、棋士が無意識に手を選択する能力への修練の効果を示唆するものであること。

 

要するに、アマ棋士の頭脳の尾状核頭部を活動させられるようになれば、プロ棋士として直感的思考が出来る新たな思考回路を手に入れることになるではないかということです。

なんとなく、筋トレの反復練習を、少しずつ負荷を大きくしながら繰返し目標に近づけていくのに似てるな感があります。

 

さて、同じように経営者としての勉強には、NIT MOTでの学びの中の『ケーススタディ』がそれに該当します。

ですが、ビジネス・スクールであればそれ自体は割と一般的な学びのメニューの一部です。

では、NIT MOT はなにが違うのか?

 

これも、前述の小田先生の Letter の表現を借りれば、外部の経営者等を招いたゲストスピーカー講義や、そもそもリソース不足等、制約条件の多い中で解を導く必要のある中小企業技術経営に関するケーススタディを積み重ねる講義がカリキュラムに盛込まれている点です。

経営の当事者である、中小企業の社長やそれに準ずる経営者が比較的多いNIT MOTの院生構成が全体に良い意味での影響を与えている可能性が高いといえそうです。

 

ではなぜ、中小企業の社長(経営者)と共に学ぶことが、それ以外の職位の方にも役立つのでしょうか?

そしてそれは当然、中小企業の社長(経営者)側にもメリットが無ければなりません。