日工大MOT 18期の宮原さんは、現在「飲食事業」と「飲食専門のコンサルティング事業」の2社を経営され、ご自身のVisionである
『ワクワクしながら飲食店経営できる世界を目指す!』
に向けて、着実な歩みを進めておられます。
今回はMOTとの出会いや、飲食店経営におけるMOTの適応性やメリット等に関しお話を伺いました。様々な苦労話などのエピソードも交えながら興味深いお話をいただきました。
飲食店向けの経営コンサルタントとして延べ650店舗の支援を経験し、「これだけのことができるなら、自分でやったらもっとうまくできるのではないか?」と思い飲食事業の「株式会社八十八や Hachiju-Hachiya」を起こしました。
正直、天狗になっていた部分があったと思います。
設立当初は事業がなかなか上手くいかず、3店舗中2店舗を閉店する事態に追い込まれました。経営するなかで困難に感じることは多々ありましたが、なかでも職人気質の方々が集まる調理現場でのコントロールは難しかったです。
調理現場の職人の方々に経営の視点を持ってもらうためには、相手を知る必要があると思い、調理師免許を取得しました。
職人と調理のスピードを競ったり、一緒に盛り付け方のアイデアを出し合ったり・・・
現場で多くの作業時間を共にすることで経営の話ができる間柄になり、それが店舗運営の最適化の大きな要素になりました。
自身でも調理を10年ほど続ける中で見えてきたのが、レストラン経営に加えてロケ弁やテレビ局へのケータリング用のお弁当デリバリー事業でした。自らレシピ作りや調理を行ったお弁当は、実際口にしてくれた芸能人の方々の口コミを通じて大きな評判を呼び、販路を飛躍的に拡大していくことができました。
今では事業の一部として大手ホテルチェーンと提携し、全国30拠点へ毎日朝食を提供するなど広い分野で実績を伸ばし続けています。
飲食店業界は1年以内で30%以上が廃業、3年で半分が廃業するといった厳しい業界です。
私自身も飲食業に長く携わる中で、飲食業の楽しさを知りながらも、飲食店の経営に苦労される経営者を多くみてきました。
そんな中で気づかされたのが、「飲食店の経営ついて総合的に教えてくれる場所や教科書などが世の中に全くない」「飲食店経営において料理の品質と同じか、それ以上に重要なことを伝えてくれる場所がない」という事実です。
自身の経験を俯瞰してみても、調理や集客・人材育成や資金繰りなどをスポット的に指南するものはあっても、飲食店向けのトータル教育ソリューションが無いのです。
であれば、自身の経験や知識に基づきそれを作ることで世の中の役に立てるのではないか。高い廃業率の改善に貢献できるのではないかと考えました。
「ワクワクして飲食経営をできる方を世の中に増やしたい」
そんな思いから、株式会社コラボパートナーという飲食店の経営支援を行うコンサルティング会社を立ち上げました。
多くの企業様に経営支援を行い、その実績が認められ経営革新等支援機関の認定を受けるに至っています。
飲食業は製造業と関わりが多く、例えば厨房の設置場所・備品のレイアウトや皿の置き場所・調理者の動きや体の運動などの工程を分析することで生産工程の最適化を図る必要があります。
経営管理の視点で見ると、生産管理や工程管理のように、製造業と同様の要素が飲食業には多いと感じています。
例えば、接客においては、従業員の人数を減らしても顧客とのタッチポイントを調査しながら最適な接点のタイミングと回数を増やしていくことで満足度を高めていく事ができます。入店から退店までの接客を科学し分析することで、最適な方法を提案することができます。
売上向上においても、単純にPOSデータだけを基にした施策ではお客様の満足度が見えませんし、クーポンなどに頼った施策では一時的な効果しかみられず、コスト高でいずれ収益を圧迫していく結果に繋がります。
また、アルバイト教育においても、チームミーティングを定期的に実施し、お客様のアンケートの結果に基づいて自主的な改善活動なども行いながら、人材を育てていく必要があります。必要なマインドセットがないまま店舗運営の最適化を図ることは難しいです。
総じていえば、売上×客単価、新規客・固定客といった発想だけでは、うまくいかないと思います。
1年制であること、MOTを併学できること、それから色々な業種・業態、経営者をはじめとした様々な役どころの方々とのネットワークが形成できることでしょうか。
将来的に、飲食業においても自身の知見や思考だけでは手が届かないこともあると考えています。
そんな中、NITMOTには専門性の高い士業や経営者を含む様々な業種・業態の方が在籍されており、卒業後も交流を深めながらそれぞれの考え方や知見に触れることができています。長年コンサルティングにも携わっていますが、「こんな見方もあるのか」という発見や驚きが多くありますね。
事業をする中で、「MOTって何ですか?」と聞かれ、話のタネになることが良くあります。MOTはMBAと比較されることもあり、MBAでも価値創造と謳われることが多いですが、技術や技能を起点に価値を創造するMOTの方が、今の時代にマッチしているように感じています。
また、養成課程修学中に診断実習があり、色々な企業様の現場に実際に赴きお話を伺ったのですが、経営に正解は無いながら、『流派』のようなものは在ると感じました。粛々と沢山の行動を積み上げながら成果としてまとめていくやり方や、初めにVisionを掲げそれを共有しつつ進めていくやり方等、経営者、人それぞれのやり方があると感じました。
それらも参考にし、自分自身を変え続けられていることを手応えとして感じています。