バンド仲間のような出発から、事業承継/PMI支援に挑むプロ集団へ

同期2人と共に設立したHAKUBIという企業で、地方創生支援と事業承継支援を行っている日工大MOT17期、診断コース4期の衣笠さん。

 

ゼミ主査を務めた平川先生とともに起業までのエピソードと現在の挑戦についてお話を伺いました。

 

同期を思いやる心が創業に発展

宮脇さん(写真左) 巳亦さん(写真中央) 衣笠さん(写真右)
宮脇さん(写真左) 巳亦さん(写真中央) 衣笠さん(写真右)

―特定課題研究の時から事業化は構想していたのですね。

 

衣笠:私の実家はお寺なのですが、日本のお寺の数は7万件から3万件まで減少していて、大きな課題と感じておりました。日工大MOTの特定課題研究では、平川ゼミに所属し、この課題に対応するための事業を研究していましたが、当初は事業化への思いはそこまで高くありませんでした。

 

ゼミには地元の事業承継をテーマとして研究する宮脇さんもいまして、二人とも事業承継が必要な事業者への対応方法という同じ視点を持っていました。また、当時は二人とも企業に在籍していたのですが、卒業後は中小企業診断士として、積極的に活動したいという共通認識を持っていることを知りました。

 

寺子屋×パリコレ
寺子屋×パリコレ

卒業後、継続的に活動を続けるために、定期的に報告会のような形式でコンタクトを取り続けていました。

 

その中で、宮脇さんが地元香川のお寺を活性化する活動を平川先生と一緒に行っており、私も協働という形でプロジェクトに参画させていただきました。

 

例えば親子海ごみ拾い活動や、パリコレモデルによる寺小屋でのウォーキングイベント等です。イベントを通じて、SDGsや子供に夢を持ってもらい挑戦することの重要性を伝えていました。

 

寺×海ごみ拾い!
寺×海ごみ拾い!

協働する中で、宮脇さんの地方創生に対する強い思いに触れることができ、自身も事業化したい気持ちが高まりました。元々私も兵庫県が地元で、地方創生したい気持ちも一部で持っていたのもあるかもしれません。そこで、平川先生にもこれまで考えていたことをお話したところ、後押ししていただきまして、創業することを決めました。

 

創業検討初日!
創業検討初日!

―宮脇さんとはゼミが一緒だったのですね。

もう一人の共同設立者、巳亦さんとはどのようなきっかけだったのでしょうか。

 

衣笠:巳亦さんは中小企業診断士コースの同期で、同期の中でも財務に強いスキルを持ち、創業に対する強い意欲を示していました。ただ、修了後は仕事や家庭の事情で活動が制約されていることを気にしていました。そのため、同じ意欲を持つもの同士、どこかで協業できればという思いがあり、声をかけてみたのがきっかけです。

結果的に、私がCEO、製造業経験が長い宮脇さんがCTO、財務に強い巳亦さんがCFOという形で株式会社HAKUBIを立ち上げました。

 

後継者不在企業の事業承継に立ち向かう

―現在の主事業である「事業承継支援」について教えてください

 

衣笠:当社では、後継者不在企業がM&Aを実施した後に行う統合作業(PMI)を中心に行っています。

 

事業承継は、経営者の高齢化が進む中、親族承継が難しい企業が増加しており、その結果、後継者不在企業に対するM&Aの需要が高まっています。

 

―統合作業の支援についても教えてもらえますか。

 

衣笠:M&Aの需要増加に応え、買い手と売り手を結びつけるM&Aの仲介業者は増加しています。しかし、M&Aの中でも複雑で困難なプロセスは統合作業であり、この段階でつまずく企業も多いのが実態です。多くの仲介業者は、高額報酬が期待できる仲介までのプロセスに注力し、費用対効果の低い統合作業支援には注力しきれていないことが多くあります。

 

そこで、当社は、M&A仲介会社と連携しながら、アフターM&Aサポートとして、統合に向けた計画策定に加えて、新しい組織の効率性と競争力を高めるために欠かせない組織統合や業務プロセスの統合などの支援を行っています。法的な部分は弁護士などの専門家にも入っていただきますが、中小企業診断士として、現状を把握して最適解になる対応を現場目線で行っているような形です。

 

 実際に宮脇さんが昔勤務していた会社が買収されたのですが、統合作業が上手くいかず、社員のほとんどが辞めてしまい、大変だったという経験を持っています。統合作業の重要性は身を持って感じているからこそ、現場目線での支援ができると思っています。

平川先生!
平川先生!

―実体験が現在の業務につながっているのですね。

 

平川先生:地方の事業承継支援をしたいというのが、入学時の想いで、私のプロジェクトに参画しました。

 

実際に地方では、事業承継支援のニーズは大いにあり、60歳を過ぎて初めて事業承継を意識するものの、後継者もいなければ相談する人もいない。

後継者が見つからない場合、最悪廃業というケースもあるため、早めの支援が必要なのです。

 

また、地元から宮脇さんのように都会に出たものの、地方に戻ってきたいという人も一定数います。地元で起業となると、一から資金調達をする必要からハードルが高いのが実情です。一方で、既存の企業であれば、資金面をはじめ経営資源が揃っている。そのため、私のプロジェクトでは地方で経営者をやりたい人に対して経営人材育成を行い、地方の後継者不足企業とのマッチングを実施しています。

不敵に微笑む衣笠CEO!
不敵に微笑む衣笠CEO!

衣笠:HAKUBIは、このプロジェクトにも携わりながら、事業承継に向けた準備段階の相談にも応じています。

 

中小企業と対話する中で、会社全体を俯瞰的に診断することで、必要な支援を施しています。例えば、後継者不在企業でも売却する前段階で課題を抱えているケースもあり、そういった企業には経営支援という形で携わっています。

 

M&A仲介会社の場合は、すぐに売れない状況だと、経営支援などせず、すぐに繋がりが切れてしまうことも結構あります。当社の支援方法であると時間がかかりますが、本質的なニーズに応えられるため、意義があると思っています。

 

これまで様々な事業をお話しましたが、自分たちが元々やりたかったことと、できることのバランスを考えながら動いている中で事業が固まってきたのが現状です。

日工大MOTの中小企業診断士だからこそのシナジー

―MOTを持つ中小企業診断士であることの利点はありますか?

 

衣笠:そうですね、元々宮脇さんは製造業の現場リーダーとして活躍していたこともありますが、今回MOTで学んだことで、経営視点で見える範囲が広がりました。私も製造業出身ですが、経営戦略がメインの業務でしたので、現場にも深く入り込み、支援ができるのは日工大MOTのおかげだと思っています。

 

また、中小企業診断コースは診断実習でメンバーと濃密な時間を過ごすことで、お互いの強みを知ることができますので、事業化にあたってもシナジーが発揮されていると思います。当社は巳亦さんが会計事務所や事業者会社での経験が長く、管理会計の視点からもアプローチができる点が特徴ですが、製造業支援に必要な視点を全て持ち合わせることができたのも日工大MOTの出会いのおかげです。それぞれが得意分野を持ち寄って中小企業診断士という共通項を活かして事業を進めることができています。

 

HAKUBIのコアバリュー 出典:HAKUBIウェブサイト
HAKUBIのコアバリュー 出典:HAKUBIウェブサイト

―HAKUBIに込められた思いもお聞きしてもいいですか?

 

衣笠:3人の価値観をアルファベットで表しています。

例えばH:Helmには、中小企業が上手くかじ取りができるように導いていく、という思いが込められています。

 

元々3人で色々と候補を持ち寄ったのですが、インパクトが薄く、それならば、持ち寄ったものを足してみようということになりました。バンドみたいですけど。

 

ただ、理念を持って高い意識で中小企業に立ち向かっていくことが重要だと考えていまして、そういう意味では、コアバリューを持ったのは良かったと思っています。

 

―最後に一言お願いします。

 

衣笠:日工大MOT入学時は、創業の想いはそこまで高くありませんでしたが、日工大MOTでの出会いを経て、ここまで事業として動き出すことができました。当社は、創業1年目ですが、地域創生の活動のみならず、M&A仲介・アドバイザリーサービスを提供するいくつかの企業様と連携し、プレM&AコンサルティングやPMIの領域で協業するなど、着実に前に進んでいます。

 

それぞれ個人としても活躍していますので、今後も成長し続けることで、中小企業の新たな可能性とその先にある幸せを共創していきたいと思います。

 

株式会社HAKUBI経営陣!
株式会社HAKUBI経営陣!

―本日はお忙しい中、ありがとうございました!

 株式会社HAKUBIの、より一層のご発展を祈念しております!