今回は、我々MOT仲間の中でも珍しい、社会起業家の方をご紹介します。
事態対処という、特殊な現場での緊急医療Methodを、日本をはじめアジア全土に広めようと奮闘されています。
そのMethodは国際標準なのですが、色々あって日本にはまだ十分浸透しているとは言えないようです。
たまたまスケジュールが合いましたので、活躍の場の一つである沖縄にて、現場に同行しインタビューさせて頂きました内容を基に、まとめさせて頂きました。
新しい緊急医療基準を浸透させる。
『奮闘』と表現しましたが現場を見て色々な苦労話を聞くにつれ、これはもう、『新しい価値(医療基準)を社会に敷衍していくための闘い』なのだなと感じました。
さすがは元自衛官らしい、天晴なバイタリティです。
微力ながら、応援しています。
今後も頑張ってくださいませ。
MOTな社会起業家の闘い
社会起業家とは、社会の課題を事業により解決することを目的としている方を指します。
今回は、社会起業家として世の中に新しい価値を提供すべく奮闘する、14期生の照井さんのエピソードをご紹介します。
◇14期生 照井資規さんのご紹介◇
照井資規 (Wikipedia)
ジャーナリストとしての活動
活動紹介動画 https://youtu.be/M9GtrOZYfQU
経営している会社 株式会社いきがい http://tacmeda.com/
TACMEDA:Tactical
Medicine ESSENTIALS ASIA chapter
(国際標準緊急事態対処医療 アジア支部)
ブログ http://blog.livedoor.jp/speranza_raggio-ranger_medic/
実際の活動
コロナと闘う
さて、今、まさに直面しているコロナ禍です。
ここ沖縄でも、観光客は激減し、飲食業も大きな打撃を受けておられるようです。
心なしか人通りも少ないように思えます。
沖縄は日本で唯一、マラリアが発生する地域です。アメリカがベトナム戦争に本格的に介入し始めた1964年から65年には米兵が持ち込んだ風疹の大流行など感染症に悩まされてきた島です。
そうした歴史から琉球大学医学部は国立大学としては感染症に明るく、照井さんは医学部非常勤講師として救急医学を医学生に教育しています。
そこで沖縄でも、『 国際資格救命特技者 』 の養成を主な目的とした「 TACMEDA 沖縄」の活動をされています。
まずは沖縄での拠点である、なは市民活動支援センター内の一室にある事務所をお
訪ねしました。
時節柄、感染症予防に係る情報発信が好評なことと、なんといっても照井さんご本
人の、にこやかなお人柄も相まってか、たくさんの笑顔に迎えて頂きました。
そこで再認識させて頂いたこと。
相手(事態)を正しく理解し、必要な対処を行うことが肝要。
ウイルスは人の細胞の外で増えることは決してありません。感染対策はまさに「人次第」『コロナのことを深く正しく、知れば知るほど、ウィルスは弱くなる 』照井さんのお言葉です。まさにおっしゃる通り、その通り。
照井さんのご専門は、緊急事態対処医療、大規模自然災害、原子力災害などの特殊災害、テロなどの人為災害、戦争などの有事での傷病者の救護・救命と医療の連携による最大多数の最大救命を実現するための教育の普及が目的。
新型コロナウイルス感染症対策は生物テロ・生物兵器対処法の応用によるもので、迅速、且つ最大効率の、感染症を含む傷病者への対処 Method には、説得力があります。
1階には女性センターがあり、女性の安全・安心のために新しい研修であるARTS (アーツ Anti Rape Trainingand Strategy を始めたいそうです。
Tactical Medicine ESSENTIALSには医療従事者のための護身術実習があり、女性が占める割合の高い職業だけにARTS は 女性に特化するよう、その教育プログラムを充実・発展させたものです。
その他の活動として、飲食店への感染予防対策Method の提供もされてました。
日本国は奈良の大仏の時代から海外からの感染症に悩まされており、新型インフルエンザ、 SARS 、 MARS と次々と新興感染症が流行しては、その発生間隔も短くなっています。
新型コロナウイルス感染症が収束しても、また新たな感染症がやってくることは避けられません。沖縄は台湾との直行便もあり “ Keystone of the pacific ”と呼ばれる地理上の特性からも人の交流が活発で、沖縄の飲食店は感染症も含めた「安全と安心」が営業の基盤となることを見据えた「価値の創造」としての取り組みです。
こちらでも、『 正しく知る 』 ことにより、 『 適切な対処 』 が可能となり、安心・安全な飲食店として自信をもってお客様を迎え入れられると、『しゃぶしゃぶ浜田 』 の、りえママさんが、明るい笑顔で語ってくれました。
美味しそうなお料理のお写真が満載!
【 りえ ママのインスタグラムはコチラ 】
また、『 国際資格救命特技者 』 が在職するお店として、インバウンド、この場合、基地関係者の来店にも役立っているらしく、なるほど日本人よりも安全・安心に強い関心を持つ外国人のお客さんにとって安心だろうなぁ。
なは市民活動センターと同じコロナ対策啓蒙の掲示物がカウンターなどに貼り出されており、マスクの着用法などは閉店時にお店の外からも見られるようになっていました。
ウイルスはタンパク質で構成されているので、野外バーベキューが最も安全で、しゃぶしゃぶや焼き肉などの「熱い料理」は感染のおそれが少なく、サラダやお寿司など「冷たい料理」には注意が必要です。
ウイルスは人の細胞の中でなければ増えることはありません。一方でカビは自分で増えることができます。湿度の高い沖縄ではカビの繁殖が問題であり、カビ対策をしていればウイルス感染症対策は大丈夫という観点は沖縄の特徴をとらえており新鮮に感じました。
上の図は、しゃぶしゃぶ浜田の玄関に掲げられている看板の拡大図です。
りえママさんは看板の中心にある、 TACMEDESSENTIALS (国際標準緊急事態対処医療)講習を受けておりしゃぶしゃぶ浜田は周囲に描かれた7 種類の危機に対応できることをアピールしています。
絵の下には、従業員は国際標準の救護教育を受けており、心肺蘇生法、 AED (自動体外式除細動装置)の使用法、救命止血法を習得、国際的な救命教育 TACMED と ITLS に準拠していることが記述されています。
しゃぶしゃぶ浜田 インスタグラム はこちら。
しゃぶしゃぶ浜田が備えている7種類の危機とは、Emergency Codes として国際的に標
準化されているものでドラマや映画に描かれた「コード・ブルー」が有名です。
新型コロナウイルス感染症は人に起因するものなのでカラーコードはオレンジです。
「新型コロナ」と周知するとパニックを起こしかねないので、「コードオレンジ」と周
囲に伝え、そのための対策「コードグリーン」を発動するという感じです。
照井さんは東京では恵比寿にて、飲食店における安全・安心の価値創造の活動を行っています。
2021/4/20 追記
しゃぶしゃぶ浜田に、AEDが設置されました。照井さんの会社の取扱製品です。
そして、心臓専門医が、顧問でついているとのこと。
安心・安全が、また一歩充実した同店です。
離島の緊急医療サポート(緊急医療現場に世界基準を浸透させる闘い )
さて、 照井 さんの 沖縄 でのもう 一 つの 活動 として 、 離島 ・僻地の医療格差改善のために活動するNPO 法人の支援も進めておられます。
航空医療チーム ・メッシュの活動をサポート。
https://www.meshsupport.jp/
照井さんが行っている支援は次の3つです
1.フライトナースの養成と派遣
2.フライトドクター・フライトナースの教育プログラムの研究と普及
3.航空患者搬送・離島における救出・救命用資機材の研究
教育プログラムは日本国内ではなく、国際標準を目的としたもので照井さんは、実際にITLS や TACMED の米国本部の教科書の執筆と米国本部発行の教科書の翻訳もされています。
MESHでの研究がそれらの教科書制作に活かされており台湾や韓国で担当している教育にも反映されています。
こうした国際的な活動における、教育プログラムや救出・救命機材の収益の一部を寄付に充てています。
遭難者の捜索に活躍するヘリコプターは、世界一小さいフランス製の医療用ヘリです。
航空医療チーム ・メッシュは医療支援のみならず、遭難者の捜索なども行います。
その分野でも、陸上自衛隊の衛生運用幹部だった照井さんの航空機運用や捜索などの
ノウハウが活かされているのです。
南西諸島全域の患者搬送、
医師派遣に活躍する医療用飛行機
沖縄本島北部の救急患者搬送、
遭難者の捜索に活躍する医療用ヘリコプター
世界一小さいフランス製の医療用ヘリ
1.フライトナースの養成と派遣
写真のナースのように週に1度のチーム ・メッシュ の待機日以外は消防庁での救急相談看護師を務めており、緊急度の判定や病院紹介に長けている看護師を派遣しています。
彼女は予備自衛官でもあり、新型コロナウイルス感染症対策では武漢からの帰国者への医療支援を行い、フジテレビのワイドショー番組、ニュース番組にも出演しています。
現在は、首都圏と神戸からフライトナース要員を派遣していますが、コロナ禍収束後は沖縄県で予備要員も含めたフライトナースが常時待機できるよう、沖縄での本格的な養成事業を開始し、それは台湾を始め東アジア圏の標準化を目指しています。
2.フライトドクター・フライトナースの教育
照井さんの著作「イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 」は翻訳され、韓国、台湾、マカオ、香
港で日本よりも多くの人に読まれています。近日発売されるフライトドクター・フライトナー
スの教科書もこれらの地域の医療従事者から求められているものです。
照井さんは、イラストでまなぶ!戦闘外傷救護はシリーズ化することを目指しています
3.航空患者搬送・離島における救出・救命用資機材の研究
また、世界中で役に立つ最新救命用器具の研究も行っています。
今回は、国際的に開発が進められている最新仕様の救命用具(多目的運搬器具兼頸椎保護具)の意見聴取の場を拝見させて頂きました。
TACMEDA
Tactical Medicine ESSENTIALS は国際組織なので、そのアジア支部 ASIA chapter である TACMEDA は世界標準仕様の機材が国内最速で入ってきます。
説明を受けた現場の救急救命スタッフも、初めて接する情報に驚きを隠せないご様子でした。
画像は、照井さんと炭素繊維積層板で製作された多目的運搬器具兼頸椎保護具と自在に形状を変えられる副子「 SAM スプリント」です。
照井さんと派遣されているフライトナースの藤田さんはSAM スプリントの考案者である医師 Dr. Sam Scheinberg より毎年のように直接使用法の教育を受けている唯一の日本人です。
現在、日本で普及している方法は顔を正面方向でしか固定できず、しかも垂直方向に牽引するので傷病者に負担をかけるのですが2017年より国際的に普及している SAM スプリントによる方法は首を傾けた状態で負担を最小にして安定化することができます。
一般的に使用されてきたバッグボード(全脊椎保護具)は傷病者に負担をかけるため、2017年より使用されなくなっています。
照井さんは日本の国土の70%が山地である特性に適合した、多目的運搬器具兼頸椎保護具を考案しました。
国際的に普及しており、日本では全国の警察が備える担架収納袋兼救急品携行バッグに入る大きさで設計されており、警察機動隊への普及にも努めています
社会起業家にとってのMOT
照井さんは、自衛隊を退職後、そのスキルを活かしてJICA の在外邦人への安全・救命教育に携わっていました。
その活動は世界13か国、在外邦人834、現地国人68名に及びます。そんな中、現地で同じく JICA で活動していた MOT の修了生に出会いご紹介頂き、MOT を知ったようなのです。
その際に MOT に期待したのは、これまで自身が学び、血肉化してきた様々な知見やスキルを整理し、より効率よく事業に活かせるように再構成することでした。
照井さんにとっての技術経営とは、特殊性を武器に事業効率を上げる手段ということになります。
つまり、自衛隊時代に学んだことを、どうやって経営に活かすのかを具体的に知ることです。
例えば、自衛隊ではマーケティング的なことは、あまり学びません。
しかし、MOT を知れば、身に着けた戦略策定 Method をマーケティング分野に応用することが出来ます。
現場でシリアスに突き詰められた理論を、ビジネスの現場で最大効率で実践することが可能になります。
効率の良い考えかた、思考Method を身に着ける。
そのための場として MOT は機能します。
結果として、自信が付き、自己肯定感が高まる。
だから、まわりに良い意味での影響を与え、そして仲間として巻き込んでいく。
そうやってコミュニティへの参加者を増やし、『 防ぎ得た死 』 という事象を起こさせない、撲滅に努める。
そんなムーブメントを 成長させていく。
MOTを修め活用し、事業目的である社会課題解決に向けて、着実に前進されている、NIT MOT 14期生、照井さんのエピソードのご紹介でした。